生成AIが学生を「本棚」へ――麗澤大学×七夕研究所の事業創造演習で、AIと大学図書館を接続する新たな教育実践 蔵書検索連携AIをチームの会話に常駐、講義2日目だけで150回超の蔵書検索

株式会社七夕研究所(本社:神奈川県小田原市、代表取締役:北島哲郎、以下「七夕研」)は、麗澤大学経営学部(千葉県柏市)の集中講義「ビジネス・イノベーションプロジェクトA」(2026年8月25日〜28日、担当:松井勇起 同学部准教授)に企画・技術・運営面で参画し、生成AIと大学図書館を接続した事業創造演習を実施しました。
講義では、AIが文献内容を答えて完結するのではなく、学生の問いに応じて麗澤大学図書館の所蔵書と配架場所を案内する環境を構築しました。その結果、学生は連日書架に足を運び、図書館内の演習室では1人あたりおおむね10冊前後の資料を机上に並べて調査する様子が見られました。必要な資料を求めて都内や近県の公共図書館まで自主的に出向いたチームもあり、3チームすべてが4日間で事業構想書を完成させました。
生成AIによる情報探索と図書館での文献調査を対立させるのではなく、AIを「答えを出す道具」から「資料へ導くインターフェース」として位置づけた教育実践です。

取り組みの概要

講義のテーマは「生成AIが書き換える事業創造のあり方」。学生は5本の事業テーマ(感性データのビジネス活用、ミュージアムDXとメタデータ、AIによる人の選別の監査、在野研究支援、ファミリービジネスの事業承継)からチームごとに1本のテーマを選択し、3チームに分かれて文献調査から事業構想書の制作までを4日間で行いました。
環境面の特徴は、役割の異なる二つの層を分けたことです。
考える場:AIボットが常駐するチームチャット。 七夕研が開発したLLMボット(Anthropic社 Claude Sonnet 5.0)を、Discord上のチーム別チャンネルに常駐させました。ボットは麗澤大学図書館の蔵書検索システム(OPAC)に接続されており、学生の質問に対して学内の所蔵書と配架場所を具体的に案内します。1対1のチャットではなく複数人の会話に同席させたため、ある学生の質問と回答をチーム全員が読める状態になり、質問すること自体がチームの共有財産になりました。議論の節目には、ボットがそれまでの内容を文書に自動整理する機能を備えています。
作る場:成果物の制作環境。 構想書の制作には別系統のAI開発環境を用い、考える場で作成した文書を持ち込む形で接続しました。
運営には、松井准教授に加え、七夕研からCEOの北島(設計・環境構築・現地指導)とCROの中尾(TA、遠隔参加)があたりました。2日目と3日目は大学図書館内で文献調査を先行させ、AIによる文書生成は最終盤に置く順序としました。評価では成果物の完成度だけでなく、AIの回答を問い直す、批判的に検討する、議論の方向を修正するといった思考プロセスも重視しました。

結果

3チームすべてが、課題設定から収益モデル、リスク対応までを備えた事業構想書を期間内に完成させました。担当の松井准教授は学内のレポートを日常的に見る立場から「短期間の演習として非常に高い水準の成果物が完成した」と評価しています。
図書館の利用も数字に表れました。図書館で作業した初日(講義2日目)だけで、ボットによる蔵書検索は150回以上に達しています。 学生がOPACの検索画面を150回操作したのではなく、議論の最中に投げた問いが、そのまま蔵書検索に変換された結果です。
運営コスト面では、4日間のLLM API利用料は約20ドルでした。ボットの役割を蔵書検索の案内と議論の整理に絞り、重い文書生成を別環境に逃がした設計によるものです。10名程度の規模・4日間という条件下での実績であり、特別な計算資源を持たない教育機関でも再現可能な水準だと考えています。

背景と今後

七夕研と麗澤大学の連携は、松井准教授が七夕研の共同創業者(CKO)を兼ねることを発端としており、今回の取り組みは同氏を通じた両者の連携の一環として実施しました。今回の講義は、事業創造の演習を入り口に、将来的には制度設計の演習、さらにその制度をLLMエージェント群で走らせて検証する演習へと段階的に発展させる複数年構想の第一歩に位置づけています。
今回の実践で得られた設計知見(文献調査を先行させる工程、蔵書検索で回答を終端させるボット設計、質問が共有される多人数チャットの効果など)は、教育研究の報告として整理・公開する準備を進めています。学生のチャットログを扱う研究利用については、大学の倫理手続きと参加学生の同意取得を経た上で行います。次年度以降の開催、およびゼミ等への常設展開についても検討を進めます。
※本講義で学生が作成した事業構想は演習のための構想であり、実在の事業・企業・団体とは関係ありません。